ロックスター は 自宅の部屋で。
洋楽のCDを買う。
何だか、大人の階段を少し登った気分になる。
高校生の頃「よし、俺もそろそろ洋楽のCDを買おう」と思い、レッドホットチリペッパーズの「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」を購入した。
途中で明らかに曲調が変わり「うわ!いきなり全然違う曲になった、さすがレッチリ大胆だぜ」と思った。後々気付いたのだが、買ったCDが音飛びしていただけだった。
音楽的知識がほぼゼロ、英語詞もわからない。
そんな俺が洋楽のロックバンドを好きになる大きな理由は「ロックバンドの歴史やエピソード」だ。ロックバンドの物語ともいえる部分に興味を持ったのだ。
友達にオススメされ、グリーンデイの「warning」や、オアシスの「Be here now」を聴いた。
カッコいいと思ったけれど、心にグッと突き刺さる何かに欠けていたのかもしれない。
ちなみにグリーンデイの「warning」に収録されている「misery」という曲を聴くと、「なんかゲゲゲの鬼太郎みたいな雰囲気の曲だ」という友達の一言を思いだす。
そんな俺が一番好きな海外のロックバンドは、Nirvanaだ。
中学生の頃に愛読していた「林檎アレルギー」という本でニルヴァーナというロックバンドの存在を知る。
そしてその後購入した雑誌にニルヴァーナの特集が載っていたのだ。ニルヴァーナのヒストリーに衝撃を受け、カート・コバーンの生き様をカッコよく思った。
もしかしたら、俺よりも熱烈なニルヴァーナファンは「薄っぺらな愛だ」と笑われるかもしれない。グランジムーブメントをリアルタイムで体験出来なかったし、気が付けばニルヴァーナもカート・コバーンもこの世には存在していなかった。
けれどカートの音楽は残っている。
その後、ドキドキしながらニルヴァーナのアルバム「ブリーチ」を聴いた瞬間の、あの衝撃。カートの歌声が心に響く。荒々しく凶暴でありながら、ピュアな雰囲気も感じる。部屋で孤独なモンスターが咆哮しているかのような印象があった。
ネットによれば、1994年の4月8日、カート・コバーンはショットガンで自らを撃ち抜いたとされる。
一種のカリスマ、時代のアイコンとなった孤高のロックスターの末路は、切ない。
カートの存在が好きだ、ニルヴァーナというロックバンドが好きだ。
高校生の頃、楽器をやっている親友が家に遊びに来た時、「弾いてみろよ」と言われて、アンプにシールドを繋ぎ、俺は初めてエレキギターを弾いた。
コード進行もわからぬまま、エレキギターをかきむしるように弾いた。俺の自宅初ライブはめちゃくちゃな演奏だった。弾き方がわからなかったから。
頭の中で想像した。憧れのロックスターを。
俺は今ギターを弾いているんだ。
音楽番組を録画した大好きなあのビデオの中の向井秀徳を、雑誌に載っていたカートの姿を。想像したらちょっとだけ、ロックスターになれる気がしたんだ。
いまだに俺はエレキギターが弾けない、ニルヴァーナで聴いたアルバムは「ブリーチ」のみ。
あの日、親友二人の前で演奏しためちゃくちゃなギター演奏が俺の最初で最後のライブなのかな。
なんてね。
あぁ、今夜はニルヴァーナの曲が聴きたい気分だ。