FamilyMartってTommy heavenlyとちょっと文字の雰囲気が似てる気がするBlog

何気ない日常、音楽や映画や小説やテレビなどの感想。

歌声よおこれ

高校生の頃、ある日近所のTSUTAYAに行ったら、映画のビデオが安売りされていた。
「blue」「ピンポン」「恋の門」「GO」など。
その中に「リリィ・シュシュのすべて」のビデオもあった覚えがある。

しかし、迷った挙句、その時は違うビデオを買った。

そして後日、やっぱり気になりレンタルして「リリィ・シュシュのすべて」を見たのだ。

リリィ・シュシュのすべて」を初めて見た日の事、あの日の部屋の雰囲気とかもくるめて、記憶されている。

巻き戻しが終わり、ビデオデッキからテープが出てきた。
呆然とした表情でそれを取り出す。

あまりにも衝撃的な映画の内容に、俺は「映画の中の世界」の余韻から、ちょっと抜け出せずにいた。

そんな出来事は、初めてだった。

青春時代を描いた作品は多くあるが、「リリィ・シュシュのすべて」で描かれる青春は、爽やかなだけじゃない。

青春の裏側の、暗闇や狂気も描かれている。

登場人物たちの「痛み」や「叫び」までもが、鮮明に伝わってくるくらいに、リアルだ。

美しい街並みに、リリィ・シュシュの歌声が響く。

それがあまりにもステキで、幻想的だった。

しかしだからこそ、無邪気に残酷な一面をも覗かせてしまう青春時代のダークサイドを浮き彫りにさせてしまう。

青春時代を過ごす若者の、目の前にある広大で巨大に思える「世界」は見えない何か、越えられない壁に囲まれている気がして、どこか窮屈な気がする。
その「世界」は、田園風景だったり、学校だったり。似たような景色がずっと広がっていて、果てしなさがある。

何も無い。

だからこそ、みんな何か「楽しいこと」や「刺激」に敏感な感じがした。

青春時代、何も無いからこそ、より一層誰かの歌が救いになったりもする。

青春時代は、その当時大好きで聴いていた曲に込められている気がする。

聴けば鮮明に蘇る、青い春。

青春時代の暗闇に影を潜めて呼吸する、その呼吸の音すらも逃さないくらいに、鮮明に、美しくリアルに描き出した、リリィ・シュシュのすべて。

「これ、映画だよな?どこかで本当にあったことじゃないよな?」

物語の中の登場人物たちが、今もどこかにいるような、そんな感覚がしてしまうくらいに、この映画は生々しくリアルだ。

リリィ・シュシュの歌声は、今もどこかの誰かに響いているんじゃないだろうか。

俺の場合、青春時代を彩ってくれた歌姫は、リリィ・シュシュではなく椎名林檎だったが。