もらとりあむな青春ノイローゼ
学校の玄関を出ると、誰もいなかった。
その日が何月何日だったか、何曜日だったかは覚えていないが、高校生の頃だ。
天気はおそらく晴れていたと思う。
昔の話だから正直に言おう。
俺はあの日学校をサボった。
明確な理由、決定打となる理由は無かった。
いつもと変わらずに授業を受けていた。
しかし、「次の古典の授業めんどくさいなぁ」「早退しようかなー」という気持ちを、レゴブロックの様にいじいじと心の中で組み合わせていた。サボる事を決め、「なんか具合が悪いから休む」ととなりの席の友達に告げ、保健室に行き「なんか具合が悪くて早退したいです」などと言い、俺は早退した。学校をサボった。
本来なら「学校で授業を受けている時間」に帰るという非日常的な心境。
学校から駅までは歩いて20分程だ。俺はMDプレイヤーを取り出して、レミオロメンの「モラトリアム」という曲を聴いた。そして歩き出した。大好きな曲が、見慣れた風景に溶け込んでいく、大好きな瞬間だった。
朝は大勢の生徒で賑わうこの道も、今歩いている生徒は俺一人だ。
レミオロメンの「モラトリアム」という曲を繰り返し聴いた。
電車に乗り、家に帰った。他愛ない、青春の余白であり空白。
昼下がりに学校をサボって帰っている途中に何らかの物語が生まれたらいいのに。なんてくだらない妄想でその空白を塗りつぶしてみる。
一人歩いて帰る主人公の後ろ姿、いきなり耳のイヤホンを取られ、驚いて振り向くとそこには一人の女子が。「サボりはっけーん」と言ってニコッと笑う。
立ち止まる二人。
そこで物語のタイトルが。
なんて妄想をしてしまう。
『観ずに死ねるか!傑作青春シネマ邦画編』という本を今日買った。
.青春映画好きとしては、前々から気になっていた一冊だった。
凄まじい熱量と青春映画への愛がギッシリ詰まった一冊だった。
これは何度も何度も読み返す大事な一冊だ、間違いないだろう。
リンダリンダリンダ、GO、パッチギ。大好きな作品であり、俺が青春時代に見た青春映画だ。冴えない青春時代を最高の青春映画が救ってくれたのだ。
自分自身の青春時代の絵に圧倒的に足りない青色を映画に求めていたのかもしれない。爽やかな青色で塗りつぶしてほしかったのかもしれない。
「リリィ・シュシュのすべて」のビデオをTSUTAYAで借りてきて、部屋で一人で見て、見終わって物語の衝撃に呆然としてしまったのを覚えている。
あの日の部屋に漂っていた雰囲気まで肌に沁みこんでいるような気がするのだ。
頭の中で想像してみる。
自分自身の冴えない青春のエピソードのカケラたちを物語化してみる。
冴えなかったけれど、あの頃の青春時代はきっと、俺にとってはただ一つの名も無き青春映画なんだ。
脳内映画館、観客のいない中、映写機だけは動いている。