喋る、それはまるでエピソードを掘り起こすシャベル。
友達を車で家におくり、帰宅した頃にはもう空は少し明るくなっていた。
時間は朝の4時か5時だったと思う。
町はまだ眠っているみたいに、静かだった。
朝の静寂は嫌いじゃない。
夜中、白熱したトークで盛り上がった俺の気持ちをクールダウンさせる様な、ほんの少しだけ降っている雨はなんだか心地よく感じた。
履いているNIKEエアフォースワンの足音が、コツコツと道路を鳴らす。
8月13日の昼から、友達と河原でバーベキューをした。集まった友達はみな、中学の同級生だ。
数年ぶりに再会した人もいた。
喋ってみたらあの頃と変わっていない気がした。
肉、もやし、エビを焼いて食べた。
美味かった。
「熱い熱い」「暑い暑い」そんな風なことを言いながら焼きたての肉を食べると、なんだか「夏」という季節を丸かじりした様な気分になる。
河原でバーベキュー、と聞くと連想するのは子どもの頃に読んだあの物語を思い浮かべてしまう。
確か「トム・ソーヤー」だった気がするんだけれど。
少年たちが夜に町を抜け出して島へ探検に行く物語。少年が持ってきたベーコンがやたら美味しそうに思った記憶がある。
河原に佇み、俺はなんとなくハックルベリーな気分になった。
暗くなってきたので片付けを行ない、友達の家に再集合。
そこでまた色々と喋る喋る喋る。それはまるで青春時代のエピソードを掘り起こすシャベル。
友達と喋りながら過ごす夜はやはり大好きだ。
楽しい夏の一日だった。
こんな夏の日ならずっと続けばいいのにな、そんな風に思ってしまうよ。