青春時代を呼ぶ声がする、銀杏BOYZ。
「漂流教室」という峯田和伸の声がイヤホンから聴こえ、続いてイントロが鳴り響いた瞬間、青春映画のエンドロールを見たかの様な気分になった。
高校三年生の卒業式、いつもと変わりなく友達と電車に乗り、くだらない話をしながら学校へと歩いていく。
いつもと同じ様な景色。学校の中は様々な飾り付けがついていた。みんなが写メを撮りあっていた。
「写真撮ってよー」とクラスメイトから言われた俺は、携帯電話を受け取り、写真を撮った。無機質なカメラの音が、虚しさと切なさの入り混じる心の内側に、やけに響いた気がした。
卒業式が終わった。いつもと同じ様に、友達とくだらない話をしながら学校から帰る。
「じゃあまたな」
「また」って今度いつ会うのかもわからないのに、そう言って俺は友達と別れた。
ここから家までの道のりは一人だ。
一人になった瞬間に、急に高校生の頃の色々な風景が頭を過った。
冴えない青春時代、何度銀杏BOYZの曲に助けられてきたのだろう。
銀杏BOYZの「DOOR」と「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」の二枚のアルバムは傑作だと思う。
屋上みたいな場所にレコードと一緒に佇んでいるような何だか異様な雰囲気を放つその佇ずまいがカッコよかった。
どちらを先に聴いたのだろう、確か「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」だと思う。
あのアルバムがやはりすごく好きだ。「SKOOL KILL」という曲を聴いた瞬間の衝撃たるや。
荒々しさとセンチメンタルさが絶妙なバランスでミックスされている音の嵐、何もかもさらけ出した様な赤裸々な歌詞。全てが心を鷲掴みにした。
ちなみにアルバム「DOOR」なら「夢で逢えたら」という曲が特にお気に入り、夕暮れ時に聴きたくなる。
高校生の頃、銀杏BOYZのDVDを見ていた。嫌なことやムシャクシャすることがある時は、銀杏BOYZのDVDのライブシーンを見た。峯田のMCが大好きでモノマネをしていた。DVDに収録されている「SKOOL KILL」のPVもよく見ていた。あのPVに出ている峯田もカッコいい。峯田和伸に憧れた。同じ山形県出身という点も何だか嬉しい。
銀杏BOYZが大好きだった。
高校生の頃、図書室に読みたい本がリクエスト出来るシステムがあったので、峯田和伸の『恋と退屈』をリクエストしたのは俺だ。
青春時代のテーマソングは銀杏BOYZだった。
銀杏BOYZが2014年1月15日にアルバムを二枚同時発売した、前アルバムの発売から実に9年ぶりの出来事。
9年という数字が膨大なドラマやファンの思いを物語っている気がする。
発売日の前日ぐらいに、何気無くTSUTAYAに行ったら、銀杏BOYZの店頭プロモが準備してあった。「本当に新しいアルバムを出すんだ」という感動が込み上げてきた俺は、涙が出そうになったので思わず店の外に出た。向こうにあるセブンイレブンの灯りが少し滲んでいたということは、おそらく涙のせいだろう。とにかく嬉しかったのだ。
9年ぶりに二枚同時発売された銀杏BOYZのアルバム「BEACH」と「光の中に立っていてね」は音楽シーンを塗り替えた。2014年の音楽シーンにおいて、銀杏BOYZが9年ぶりにアルバムを出したのはとても重大なことだと思う。
「I DON'T WANNA DIE FOREVER」のPOPさや「ぽあだむ」のセンチメンタルさを噛みしめるかの様に、9年ぶりの銀杏BOYZのニューアルバムを聴いた、幸せだった。
銀杏BOYZというロックバンドが放つ光の中に立っていたからこそ、青春時代を駆け抜けることが出来たのだと思う。
「愛してるってゆってよね」なんてセリフを片思いの女の子に言えるわけもない。
僕たちは世界を変えることができない、けれどなんとなく僕たちは大人になるんだ。
この先の未来のことなんて1ミリもわからないが、多分この先もずっと銀杏BOYZの曲を聴き続ける。我が名も無き青春時代というムービーのテーマソングを。
また銀杏BOYZがアルバムを二枚同時発売して音楽シーンを塗り替えてくれる日が楽しみだ。