映画「バクマン。」を見た。
「うさぎさん」という漫画を知っているだろうか。
知らなくて当然である。
「うさぎさん」が掲載されていたのはジャンプでもなければマガジンでもない。スピリッツでもない。サンデーでもない。クイックジャパンでもない。
俺の持っていた「じゆうちょう」だ。
連載期間は俺が小学五年生と六年生の間のみ。読んでいたのは友達4、5人のみ。4コマ漫画と言っておきながら平気で10コマくらいいくような支離滅裂なギャグ漫画。
うさぎにエサを与えようとした人間が凶暴なうさぎに喰われるという衝撃的な第一話目、何故うさぎを主人公にした漫画を描こうと思ったのか、それは当時理科の授業で見たテレビ番組でうさぎが出ていたからである。
その後北条時宗や紫式部がオチのコマに登場したりと小学生男子の無邪気かつ無鉄砲なアイディアがむきだしになったこの漫画は小学校を卒業すると同時に突如として最終回を迎えた。その後の青春時代は漫画を描く事は無かった、漫画を読む楽しさに耽溺していったせいだろうか。
男の子なら誰しもが子どもの頃に漫画あるいは漫画家に憧れる時期があると思う。
小学生の頃に夢中になって読んだ『遊戯王』中学生の頃に夢中になって読んだ『ハンターハンター』『シャーマンキング』高校生の頃、学校へ行く前に友達と寄ったコンビニで漫画雑誌を立ち読みするのがなんか「高校生っぽいな」と思って俺は好きだった、『おやすみプンプン』を読んだ時の衝撃は忘れ難い。
『バクマン。』の第一話を初めて読んだ時、ワクワクした。「すごい漫画が始まるぞ」と思った。『バクマン。』が描き出した漫画家を主人公にした物語はワンピースよりもある種大冒険だったと思う。少年ジャンプという漫画家にとっての桃源郷、あるいはコロシアム、あるいは聖域とも呼べるであろう媒体で挑戦的でスリルとロマンがある漫画が始まったのだワクワクしないわけがない。
時は流れ「バクマン。」は実写映画化した。監督が大根仁だと知り俺の心の中の「見たいメーター」が振り切った。ドラマ「モテキ」や「アキハバラ@DEEP」で深夜ドラマの面白さに目覚め、劇場版モテキは映画館で見た時エンドロールが流れ出す瞬間に「今夜はブギーバックだ!」と叫んでしまいたくなるくらいに最高だった。大根仁がクリエイトする作品に常に心揺さぶられ続けてきた俺なのである。
2015年10月28日。朝からTwitterで星野源二階堂ふみの熱愛報道を知り「アキハバラ@DEEPのタイコと熱海の捜査官の甘利レミーが!?」と驚いたサブカルボンクラ男子な俺は映画「バクマン。」を見に行った。
エンドロールで感涙してしまった。
とにかく最高だった。
漫画に情熱をかける新たなる青春エンタメ映画の金字塔だと思う。
物語はもちろん映像がとにかくカッコいい。
染谷将太演じるエイジとの漫画バトルシーンや神木隆之介演じる秋人が『この世は金と知恵』のアイディアを閃くシーンとか。あと音が心地よい作品だった。漫画を描く際のペンを走らせる音色とサカナクションの音色が混ざり合いすごく心地良かった。
夢を追い求める、夢に挑み続ける、「少年ジャンプで連載」という超弩級のモンスターのような巨大な夢に戦いを挑む者たちの情熱と覚悟に打ちのめされた。