FamilyMartってTommy heavenlyとちょっと文字の雰囲気が似てる気がするBlog

何気ない日常、音楽や映画や小説やテレビなどの感想。

真夏に放たれた「芸人キャノンボール2016 in summer」という豪速球

「あの年の夏はみんなポケモンGOばかりやっていたよな」

この先何年か後の夏、今日みたいに暑い八月、きっと誰かがそんな事を言うと思う。
そしたら俺はこう言いたい「あの夏って、芸人キャノンボール2016があった年だよね」と。

まだまだ茹だる炎天下の夏の夜、その番組は突如として出現した。
「芸人キャノンボール2016 in summer」
番組のタイトルだけでは、どんな内容かはわからない視聴者がほとんどだろう。
出演者を見ればロンドンブーツ1号2号おぎやはぎ有吉弘行etc、番組内容はわからないけれど、一筋縄ではいかないようなそんな雰囲気がメンバーからは漂う。

カンパニー松尾監督によるAV作品「テレクラキャノンボール2013」
600分あるこの作品が120分弱に編集され「劇場版テレクラキャノンボール2013」として映画館で公開された。
口コミで噂は広まり、異例の大ヒット。爆発的なブームを巻き起こした「テレキャノ」はその後、「劇場版BiSキャノンボール」として再び銀幕へと蘇った。
BiSというアイドルの解散ドキュメンタリーをAV監督たちが撮影するという衝撃的なその内容はさらなる話題を呼んだ。

そしてついに2016年の元旦に「芸人キャノンボール」がテレビで公開された。
「テレキャノ」の「AV監督が各エリアで一般女性をナンパしながら車やバイクでゴール地点を目指してレースする」ルールを「芸人が各エリア毎に出されたお題に合った(にらめっこが強い人 など)人をスカウトして対決、車でゴール地点を目指してレースする」として落とし込んだこの番組。
「テレクラキャノンボール」の本来の持ち味である「ドキュメンタリーとしての面白さ」を抽出した「芸人キャノンボール」俺はオープニングしか観る事が出来なかったのだが、番組冒頭から意気揚々と喋る出川哲朗の胸元にキックを喰らわす有吉弘行の映像を観る事が出来ただけで俺は大満足だった、幸せな元旦。

ちなみに「テレクラキャノンボール」「BiSキャノンボール」も映画館でこそ観れなかったものの、DVDで観ている。
「ドキュメンタリー」としてそこに描かれているリアルと本音に打ちのめされた、ビーバップみのるさんの軽妙洒脱な語り口はモノマネしたくなるくらいに面白いし、クライスラー3000を操る嵐山みちるさんはとにかくカッコよくて憧れる。
BiSキャノンボールなんてBiSメンバー全員と恋に落ちかけそうになるくらいに蠱惑的な魅力があった、BiSについて全然知らなかったけれどこの作品がキッカケで曲を聴くようになった。
とにかくコショージメグミの可愛いさに打ちのめされた。あと観てると「いろはす」が飲みたくなる。

振り返っていたら、堰を切ったように「キャノンボール」シリーズへの思いの丈が流れてきた。
だから「芸人キャノンボールがこの夏復活!!」という言葉に心が踊った。
しかも夏というのがいい。
真夏に芸人が「笑い」を求めてレースをする、最高の企画だと思う。
とにかくワクワクした。

「TV版芸人キャノンボール2016 in summer」という文字が画面片隅に見える。
何気ない街の映像が流れ始める。
ローカル番組にゲリラ出演する芸人たちを映す様々なテレビ、それを見つめる人、通り過ぎる人。
そのバラエティ番組とは思えない雰囲気に戦慄した、とにかくカッコ良かった。
「今から始まる番組は普通のバラエティ番組じゃないんだ」と思った。
番組の演出・プロデューサーである藤井健太郎のツイートの言葉を借りるならば「芸人キャノンボールはドキュメントでドラマでバラエティ」という事だ、劇団ひとりポケモンGOしようぜと言い始めたりとにかく自由奔放。そして今回も出川哲朗の胸元目掛けて有吉弘行の蹴りが炸裂、それが合図かのように芸人キャノンボールが始動する。
車へ乗り込む芸人たち。
胸が高鳴る。

芸人キャノンボールがある夏が始まる。

バカリズムの策略家っぷり、「これがキャノンボールだから」と呟くクールすぎるおぎやはぎ小木、田村淳の頭の回転の速さと人を楽しい事へ巻き込む類稀なる才能、ニヒルに笑いながら切れ味鋭い言葉を放つ有吉弘行、水着ギャルにガラケーを笑われながらもチームの仲間に嬉しい報告を知らせるケンドーコバヤシアンガールズ田中が巻き起こすサスペンス映画さながらの事件、バイきんぐ西村が歌う尾崎豊などとにかく見所だらけの豪華絢爛な番組だった。
観ている間ずっと面白くて、久しぶりにテレビ番組をワクワクしながら観た。

番組の終盤「もうすぐこのレースも終わるんだ」と思うと正直切なくなってしまった。
夜の道路、芸人たちを乗せた車が駆け抜けていく。
夜の道路を走る車の車内、なんだろう、あの切ない雰囲気は。

昔、高校を卒業して働き始めたばかりの頃、友達何人か、男だけで夜中にカラオケをして「なか卯」でうどんを食べて、くだらない話をしながらあてもなくドライブをしたあの日の事を思い出す。
「誰か女子に電話してみよう」と言ってドキドキしながら電話したり、そんなノリが新鮮だった。
友達が運転する車の助手席から見える、夜の街並みがいつもよりも澄んだような
感じがした。
「こんな楽しい夜なら終わってほしくないな」という切ない気持ちを滲ませながら車窓を眺めていると、時は無情にも夜を朝へと変化させていく。
あの日カラオケで俺は、くるりの「ワンダーフォーゲル」を歌った記憶がある。

「ハローもグッバイもサンキューも言えなくなって こんなにもすれ違ってそれぞれ歩いてゆく」

岸田繁の爽やかな歌声、夏になると聴きたくなる一曲だ。

切なさ、面白さ、様々な感情が駆け巡る「芸人キャノンボール2016 in summer」はドキュメントとバラエティーの壁を軽々と飛び越えた。
この夏に退屈している視聴者にぶつけられた「芸人キャノンボール」というたくさんのボールは、きっと「面白い」や「笑い」に飢えたモンスターたちを大量にゲットしただろう。

真剣にふざける、真剣に面白いことに取り組む、そんなお笑い芸人たちのカッコ良さがこの番組には詰まっている。

バカリズム千原ジュニアロンドンブーツ1号2号有吉弘行たちと一緒の夏を仮想体験したかのような感覚すらある、そんな最高のテレビ番組だった。