FamilyMartってTommy heavenlyとちょっと文字の雰囲気が似てる気がするBlog

何気ない日常、音楽や映画や小説やテレビなどの感想。

冴えない青春時代の闇を吹き飛ばしてくれた、爆笑問題の光。

笑っていいとも!グランドフィナーレ」をリアルタイムで見る事が出来たのは、本当に嬉しかった。
テレビバラエティ史に残るであろう歴史的瞬間をこの目に焼き付けたような気持ちだった。

正直な話「笑っていいとも!」という番組の熱烈なファンでは無いし「笑っていいとも!グランドフィナーレ」も「せっかくの最終回だし見よう」ぐらいの気持ちで、いいともの特番を見るくらいの気持ちで見始めたのだった。

そんなゆるい気持ちが激変したのが、あの有名な「お笑いレジェンドたちの集結」の場面だ。トーク中の明石家さんまのもとへダウンタウンウッチャンナンチャンがやってくる。その後とんねるずナインティナインも登場するという豪華絢爛すぎる奇跡の場面。あの場面はもうずっとテンションが上がりっぱなしだったのだが、一番テンションが上がったのはやはりあのシーンだ。

タモリ明石家さんまダウンタウンとんねるずがトークしている真ん中にあの二人が走ってきた瞬間。

「あ」と思わず声を出してしまった記憶がある。浅草キッドの『お笑い男の星座』で読んだあのエピソードのページが脳内でペラペラペラペラとめくられていく感覚。嘘でしょ、だってダウンタウンが、松本人志がいるのに。

「だからもっかい言うけどネットが荒れるから!」
と困り顔で言い放つ松本人志のとなりに彼らはいた。


松本人志の発言を受けて、太田光はニカっと笑ったあと、すぐに表情を変えてこう叫んだ「荒れろ荒れろ!燃やせ燃やせこのやろー!」
テレビの前で俺は泣きそうになってしまった、あの瞬間に俺は一番の奇跡と感動を目撃したのだ、爆笑問題という俺にとってのヒーローが登場したあの瞬間に。

高校生の頃の話だ。
体育館のステージからは、大勢の生徒が見えた。学校祭という見えない熱狂の渦が、体育館中に渦巻いている感覚がした。
先程他の生徒たちによって行われた「オリンピックのモノマネ」でみんな笑い疲れてるような感覚すらした。
ランナーが走ってきたりとオリンピックのモノマネで大いにウケている体育館中の声を聞いてさっきまで俺はステージ横でこう思っていた。

めちゃくちゃウケてるじゃないか。

対抗意識が燃えあがった。
わけもなくテンションが上がった。
MDウォークマンの音量をあげた。
イヤホンの中、銀杏BOYZの曲が鳴り響いた。ステージ横に置いてあった、小さな赤いメガホンを借りることにした。
銀杏BOYZ峯田和伸みたいに叫びながら入場してやろうと決意した。

入場。
峯田和伸になりきり何かを叫びながら歩くも、みんながわぁわぁテンション上がっているので俺への歓声だかはわからない。
見知らぬ一年生や二年生が「あの先輩は何?」みたいな空気を放っていた。

ステージに上がってジョジョ立ちをしてみた。
誰かが「何あれウケるー」と言った。
俺がやりたい笑いのスタイルはこれじゃないのにと、早くも赤いメガホンが邪魔に思えてきた。

「Mr.お笑い」という賞を知っているだろうか。
多分、世の中の大半の人は初耳だと思う。同じ「M」から始まるお笑いの賞でも「M-1グランプリ優勝」とは全くの差があるマイナーな賞。
これを学校祭で三年連続受賞した事がある、それが俺だ。
いわゆる学校祭のイベントで生徒による投票で決まるコンテストみたいなものだ。学校で一番のイケメン、学校で一番綺麗な女子などの賞やMr.マッチョなどバラエティに富んだ賞がある中「Mr.お笑い」という賞がある。各学年から一人ずつ選ばれるこの賞。これの「Mr.お笑い」を俺は三年連続受賞している。

一年生の時は素直に嬉しかった。友達と一緒に教室にいたら、派手なギャルの先輩に呼ばれた。めちゃくちゃドキドキしてみたら「学校祭のMr.お笑いに選ばれましたー」と告げられた。お笑い大好きだった俺はめちゃくちゃ嬉しかった。

学校祭本番。ステージに上がり一言を言うのだが「こんなにカッコいい音間近で聴けてよかったです」と体育館にノリノリな曲が爆音でかかっていたので緊張気味にそんなことを言ったのを覚えてる。あとから友達に「なんて言ったかわからなかった」と呆れられた。

二年生の時も選ばれた。なんとなく「去年も選ばれたし今年もまぁこの人でいいでしょ」みたいなノリだと思う。厳選なる審査の結果ではないだろう。一発ギャグとかをやるのはあまり好きではなく、ベラベラ喋るトークが大好きだったので、ステージ上で「金原ひとみがすばる文学賞を取ったりエミネムがすごい賞を取ってる中でまさか俺がこんな賞を」みたいな事を言っていたら、「長いわー」「意味わからん」と野次が飛んできた、で、笑いが起きた。俺の提示した笑いで笑わせていたわけではなかった。

三年生の時も選ばれた。もはやMr.笑われ者みたいな気がしたが、もう賞をもらうしかないと思った。ステージに上がるのは気持ちいいし。

事前にインタビュアーの女子から「好きなお笑い芸人を聞くので、その芸人のギャグをやってねー」と言われた。

俺は困った。

俺が好きなお笑い芸人は爆笑問題千原兄弟ラーメンズ。一発ギャグとかそういう感じの芸風ではないんだと言いたかった。

本番。峯田和伸気分でステージまで歩いてきた俺。
どう答えるか迷った俺は、聞かれた質問に当時流行っていたピン芸人の名前を挙げた。好きでも嫌いでもない芸人だった。その芸人の一発ギャグをした。ウケてた。しかしそれは「流行りの一発ギャグをマネする」というまぁある種の安定したウケだった。
イケメンじゃない俺が「ラーメン、つけめん、僕イケメン」と言うのが面白かったのかもしれない。

マイクを奪い取って「俺が好きなお笑いは違うんです、爆笑問題千原兄弟ラーメンズが大好きなんです、スタイリッシュでエッジのきいた笑いが大好きなんだ、影響受けてるんだ、ラーメンズのコント見たことあるの?日本の首都は千葉、滋賀、佐賀??それだけじゃねぇんだよラーメンズは!ATOMだよ!ステージにイスだけ用意してくれ、即興コントやらせてくれ、俺が大好きな笑いは違うんだ、爆笑問題みたいなスタイリッシュに世相を切るシニカルな笑いがやりたいんだ!」とお笑い好きをこじらせた青臭い叫びを体育館中に響き渡らせたかった。

そんな妄想を頭の中で膨らましながら、苦笑いでステージを降りた。

「Mr.お笑い三年連続受賞」は黒歴史に近い。むしろ俺以外に選ばれた人の方が面白かった。いわゆる「クラスで目立つような男女ともに好かれる面白いやつ」もいたし。「なんでそいつじゃなくてお前が選ばれたの?」と友達に半分真顔で聞かれた時は「知らねぇよ」と苦笑いするのが精一杯だった。クラスの中心にいて「リンカーンとガキ使面白いわぁ」みたいな感じだけれども人気者のやつが太陽とするならば、お笑いが好きで好きで好きで好きで好きで太田光千原ジュニア小林賢太郎の影響をガッツリと受け、お笑いのプライドをギラギラ尖らせていた冴えないサブカル男子である俺は、紛れもなく月。いや、もう、闇。

たしか高校二年か三年の時、学校祭2日目の時にそれまであまり話したことがなかった他のクラスの人に声をかけられて雑談していた時「なんだよ、お前喋るとめちゃくちゃ面白いじゃん、昨日のステージじゃすべってたのに」みたいな事を言われた時は冗談で言ったのかもしれないけれど、本当に嬉しかった。

爆笑問題が大好きだった。
爆笑問題の爆テン」を中学生の時にリアルタイムで見ていてゲラゲラ笑っていた。爆笑問題の漫才の、あの世相を笑いでブッタ斬っていくような痛快な雰囲気が大好きだった。

太田光に憧れた。斜にかまえたような姿勢、読書家、暗い青春時代を過ごしたエピソード、そのどれもが俺の心を揺さぶった。カッコよかった。まさに太陽の様な温かな光ではなく、闇夜に浮かぶ月の様な光を放つあの眼光。

マシンガントークのように繰り出される太田光の言葉の弾丸、並外れた毒舌とユーモアによってその言葉の弾丸の威力は段違いに高い、強い。

喋りが、トークが武器になる。

まるでオモチャの刀を振り回すように、バラエティ番組でふざけながらも時に真剣な目をして鋭く射抜く言葉を放つ。さながら、オモチャの刀を振り回すのをやめて、真剣を構えたかのように。

爆笑問題太田光は「笑い」という刀で森羅万象あらゆる物事をブッた斬っていくまさに侍なのではないだろうか。

爆笑問題太田光の「笑い」が青春時代の退屈な闇を斬った。

あの瞬間、光が見えた。

爆笑問題は俺にとってのヒーローだ。

今もそれは変わらない。

爆笑問題カーボーイPodcast」の二人のトークで笑い、救われている。

爆笑問題は俺にとってのヒーロー、やっぱり今もそれは変わらない。