『リアル鬼ごっこJK』を読んだ。
何時に眠ったかはわからないけれど、日付けはもう変わっていて七夕の夜は終わっていたと思う。
目が覚めるともう8日の朝だった。
枕元のウォークマンもiPhone5cもバッテリーが残り少なかった、それぞれを充電器のコードに繋ぐ。充電したつもりでいたけれどどうやら気のせいでそのまま眠ってしまったらしい。
午後から散歩に出かけようと思ったけれど雨が降っていたのでやめた。TSUTAYAで借りてきた「千原ジュニア40歳LIVE」のDVDを見た。前々から気になっていたのだが約3時間の大ボリュームのため、なかなか借りる事が出来ずにいた。
もしも「好きなお笑い芸人は誰か?」と聞かれたら正直何人も何組もいるので迷ってしまうけれど、もしも「一番好きなお笑い芸人は誰か?」と聞かれたら迷わずに「千原ジュニア」の名前を挙げるくらい俺は千原ジュニアのファンであり、多大な影響を受けていると思う。
千原ジュニアの繰り出す「笑い」や「面白い」の感覚やセンスがすごく好きなのだ。
当時「堂本剛の正直しんどい」という番組が大好きでビデオに録画してはよく見ていた。
「漫画家さんの仕事場へ潜入」というような内容の回に千原ジュニアが出ていた。その回でイラスト対決のようなコーナーがあり「最強の赤ちゃんを描いてください」のようなお題が出た。
他の出演者が筋肉ムキムキの赤ちゃんや顔が怖い赤ちゃんの絵を描く中で、千原ジュニアだけが「壊れた哺乳瓶」の絵を描いていた。衝撃が走った、あの瞬間から俺の中にある「笑いの骨格」のようなものは千原ジュニアによって形作られた気がした。
DVDを見終えて夕方になった頃、まだ雨は降っていた。散歩に行くのはやはり諦め、部屋で本を読むことにした。
雨の日に部屋で本を読むあの雰囲気は嫌いではない。
確か昔、貴志祐介の『青い炎』を読んだあの日も雨が降っていた気がする。
「リアル鬼ごっこ」という言葉が聞こえてきたのも、俺が中学生の頃だった。
山田悠介作品ブームが到来し、『Aコース』や『リアル鬼ごっこ』を読んでいるクラスメイトをちらほら見かけた。その頃に一冊だけ山田悠介作品を読んだ事があるが、あまりにも濃い内容に一作品だけ読んでお腹いっぱいというか脳味噌がいっぱいになり以降はほぼ山田悠介作品を読んでいない。
あの時代から時は流れ「リアル鬼ごっこ」が「リアル鬼ごっこJK」として映画公開される。このニュースを知った時には山田悠介作品に深い思い入れが無いため、そんなに興味は出なかったが監督脚本が「園子温」という事を知った途端に、メーターが振り切れるくらいの興味が出た。園子温は俺が一番敬愛する映画監督なのだ。
ドラマ「時効警察」でその存在を知り、その後「冷たい熱帯魚」「紀子の食卓」「愛のむきだし」「ヒミズ」「恋の罪」をDVDで見て打ちのめされ、とにかく衝撃を受けた。映画館で「地獄でなぜ悪い」を見たあの日は「いつか映画館で園子温作品を見たい」という夢が叶った至福の瞬間でもあった。
そんな園子温も作家陣に名を連ねる水道橋博士のメルマガ「博士のメルマ旬報」にて「碇のむきだし」を連載している碇本学という人物がいる。彼がメルマ旬報の第一弾で書いた園子温史ともいうべき文章、水道橋博士が絶賛した「冷たい熱帯魚」評、その後「碇のむきだし」で連載している小説たちに俺は大きな衝撃と深い感動を覚えた。
碇本学のブログが面白くて何度読み返しているわからない、俺がこうやってブログを書いているのも彼の書く文章に刺激を受け憧れているからである。
今日、『リアル鬼ごっこJK』を読んだ。碇本学によって紡がれていく言葉と物語の面白さに一気に読んでしまった。
ロックバンドだったり、アニメ作品や小説だったり、カルチャーを絡めつつしなかやかに紡がれていく彼の文章は本当に美しいし、彼が見てきたものや触れてきたもの、センスがそこに詰め込まれているような気がする。
もっと彼の書く小説が読みたい。
今、一番面白く瑞々しくセンスのある文章の書き手は碇本学だと思っている。
開け放たれた部屋の窓、聞こえてくる音から察するに多分まだ雨は降っているだろうな、そう強くない優しい雨が僕らの町を湿らせている。