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青春の幕開けに向かって走れ! 映画「幕が上がる」感想

「本より重い物、持ったことがないんだ」

この言葉だけで何の劇のセリフか当てる事が出来る人間が日本にどれだけいるだろうか、多分俺一人くらいだと思う。

これは小学生の頃の学芸会でやった劇で、俺が言ったセリフ。
物語のあらすじはうろ覚えだが、このセリフはなんとなく覚えている。
あと、劇が始まってステージの幕を開かずに、閉じた幕の前に出てきて物語がスタートした記憶がある。
小学生ながらに「なんかカッコいい、この始まり方」と思った気がする。

時は経ち、高校生の頃の話。
高校に演劇部があったのは知っていた。宮藤官九郎さんのドラマにハマり、その流れで大人計画を知り松尾スズキさんの小説を読んだことがあったし、小学生や中学生の頃にあった演劇を鑑賞する学校行事も俺はわりと好きだった、演劇には興味があるほうだったが、俺は演劇部には入らなかった、理由はよくわからない、それどころか入った別の部活が嫌で部活をサボりまくっていた、帰宅部のエースだった。
そんな「部活もやりたくないし自分がやりたいことは何なのかよくわかんない思春期特有のモラトリアムな症候群」をこじらせていた高校時代、友達から何気無く誘われ、高校演劇部の発表会を見に行ったことがある。
あの日、自分と同じ高校生たちが演劇をしているのを見てすごく衝撃的だったし見ていてワクワクしたのを覚えている。

映画「幕が上がる」の主人公たちは演劇部だ。
この作品の主人公たちが所属する部活が運動部だったり、演劇部では無い文化部だったら、きっと俺はそこまでの興味は示していなかったと思う。

高校演劇にスポットをあてた青春映画、青春時代に高校演劇の世界を客席から眺めた経験がある俺としては、これほど好奇心を刺激するテーマは無いと思った。

主演は、ももいろクローバーZの五人。
俺は熱烈なももクロファンでは無いが、大好きな曲もいくつかあるし平熱ぐらいの温度のファンだと思う。
五人それぞれが可愛いけれど、この映画を見て「有安杏果」さんがめちゃくちゃ可愛いくて好きになった。

登場するキャラクターそれぞれが魅力的だが、特に有安杏果さんが演じる「中西」というキャラクターがすごく好きだ。
ある理由で演劇の名門校から転校してくる彼女、どこか控えめでミステリアスな雰囲気を醸し出していてすごくステキだと思った。百田夏菜子演じる演劇部部長である「さおり」との夜の駅でのシーンをキッカケに中西も変わっていく。
映画の中でも重要な位置付けであるあのシーンは強烈な印象を残した。

さおりが台本に悩む事で見る夢のシーンもコミカルで印象的だった。
プールサイドのシーンや自転車であぜ道を走る夏のシーン、あのシーンはまばゆいくらいに「夏の青春の輝き」を放っていたと思う。

クライマックス。
「走れ!Zver.」が流れ出し、タイトルが出た瞬間に、鳥肌が立った。
「彼女たち演劇部の青春の幕は上がったんだ」と痛感した。

爽やかさだけでなく、それこそ劇中で彼女らが見上げる夜空の星のごとくあるであろう青春時代特有の不安や葛藤をも鮮明に描き出していてすごく良かった。

ちなみに「幕が上がる、その前に」というドキュメンタリーもレイトショーで見てきたのですがこれも面白かった。平田オリザさんのワークショップのシーンがすごく刺激的だった、演劇の骨格の組み立て方を見た感じがして。

最後に、「幕が上がる」の作品内で小ネタがいくつかありました。冒頭で燃やす台本のタイトルが「ウインター・タイムマシン・ブルース」だったのと、国語の授業中のシーンでの「相対性理論」についての先生のセリフ、この二つが個人的には面白かったです。